La Cabrette

フイゴが特徴的な、フランスはオーベルニュ地方独特のバグパイプ。スフレ(バッグ)の部分はヤギの革、ピエ(笛)の部分は主に黒檀などの木材が使用されており、その姿も音色も大変美しい民族楽器。(さらに詳細についてはcabrette.com(フランス語)に)

バロック以前からキャブレット(フイゴ式バグパイプ)によってミュゼット音楽が演奏されていた、フランス中部山岳地帯のオーヴェルニュ地方。そこにはそも そも、オック語という固有の言語を持った「オック人」と呼ばれる人々が住んでいた。厳しい自然環境で農作物も育ちにくく、人々はジャガイモなどが中心の農業、木こり、リャマ飼いなどを生業としていた。(※この頃のオーヴェルニュの暮らしに関しては、ジョルジュ・サンドの小説「笛師の群れ」に詳しく 描写されています)。

1800年代後半、ところ変わってパリ市は好景気の中、かのパリ万博の準備が進められていた。そのための労働力として、オーヴェルニュはじめ国内の農村や隣国からの移民など、大量の出稼ぎ人がパリに流れる。バスチーユ広場界隈に居を構えたオーヴェルニュの人々は、主に石炭の運搬や販売、水運びなどで生計を立てていた。彼らが営む石炭の販売店にカフェが併設された「カフェ・エ・シャルボン」は、夜ともなれば同郷の者の社交の場となった。 そこで毎夜高らかに鳴り響いたのがキャブレットによるミュゼットであった。故郷への想いを分かち合いながら労をねぎらい、明日への活力を充電する為に無くてはならないもの、それが彼らにとってのミュゼット音楽だった。

現在、パリにはたくさんのカフェが存在し、その経営者にオー ヴェルニュ出身者が多いのは以上のような歴史があったためである。地元オーヴェルニュもインフラが整備され、自然あふれる風光明媚なこの地方は、今ではヴァカンスのシーズ ンには国内外から数多くの人々が訪れる観光地となっている。世界的名水「ヴォルヴィック」の水源地としても有名。